THX pm3 プロジェクトの流れ 工程詳細
1.事前準備
「pm3 SITE INFORMATION FORM」をTHXへ送る前に、以下の事項を決定しておく必要があります。
スタジオのコンセプト
どのようなマルチチャンネルのプログラムの作成を行うのか。
例) 音楽作品 : ライブビデオ(DVD-Video)、DVD-Audio、SACDなど
ポスプロ作品 : DVD-Video、ゲーム、放送(ドラマ、CMなど)、映画(プリミックス)など
映像を伴うマルチチャンネルプログラムか否か。
映像を伴う場合、TVモニタを用いるのか、スクリーンを用いるのか。
TVモニタを使用した環境でもpm3の認証を受けることは可能ですが、その場合、スタジオ・サイズとの兼ね合いを検討する必要があります。
プロジェクトチームの編成
以下の担当会社を決定しておく必要があります。
建築設計会社
建築施工管理会社
音響コンサルタント会社
機材供給会社
ワイヤリング会社
また、THXに対して混乱が生じないように、スタジオの担当者を明確にしておく必要があります。
担当者は常にE-mailが使用でき、PDFファイルが閲覧できるる環境であることが望まれます。
ラフプランの検討
使用するスピーカの選択や、契約後に始まるTHXとのスタジオ設計に関するやりとりに備え、事前にある程度のプランを進行しておくことが重要です。
スタジオプランに関しては、スピーカ・レイアウトや吸音・反射など音場に関わる設計の他に、遮音計画を厳密に行っておく必要があります。
THXの要求する遮音性能を満足するためには、一般的には「浮遮音構造」を用いる必要が生じます。
また、室内暗騒音レベルに関しては、空調機強運転の上、使用機器の電源を全て入れた状態でNC25以下(推奨NC20以下)となる必要があります。
従って、空調だけではなく室内の機器に関しても、騒音レベルの高いものに関しては、消音(遮音)対策を検討しておく必要があります。
モニタ系機材の選択
以下のモニタ系機材に関しては、THXが認証したpm3スタジオ用の認証機材(THX pm3 Approved Equipment)の中から選択する必要があります。
スピーカ
対象とするスタジオの大きさに見合うだけのパワーを有するものであれば、認証機材の中から自由に選んで頂くことができます。
但し、ポスプロ作業を主目的としたpm3スタジオを作る場合、サラウンドスピーカに関してはは、トライポール型が基本となります。
アンプ
選択したスピーカを十分なパワーで駆動できるものであれば、認証機材の中から自由に選んで頂くことができます。
ベースマネージメント・コントローラ
pm3スタジオでは、ベースマネージメント・コントローラの導入が必須となります。
ベースマネージメント・コントローラに関しては,THX認証のものをTHXより購入して頂く必要があります。
スクリーン
映像モニタにスクリーンを使用する際には、Stewart社のMicro perf.音響透過型スクリーン(THX認証スクリーン)を使用する必要があります。
その他
以下に関しては、THX pm3 の認証機材ではありませんが、pm3スタジオをつくる際には必須または必要とされることが多い機材です。
GEQ (グラフィック・イコライザー)
各チャンネルもしくは、全てのスピーカに対して、スピーカ特性調整用のGEQが必須となります。
GEQに関しては、認証制度はありませんが、Q値が一定の1/3オクターブバンド(31バンド程度)のものが必要となります。また、調整作業やメンテナンス性を考えると、GEQの設定パラメータがシーンメモリーとして記憶できるものが望ましいと思われます。
ディレイ
ディレイに関しては、必須ではありませんが、実際には必要とされることが多い機材です。
ディレイのステップに関しては、約0.02msec(fs=48kHz、 44.1kHzの1サンプリング間隔分)の精度が望まれます。従って、一般的には、デジタル・ディレイを用いることになります。
デジタルディレイは、それ自身がシステム・ディレイやレイテンシーと呼ばれるディレイを持っています。すなわち、ディレイタムの設定を0msecにしたとしても、デジタルディレイを挿入するだけで数msecのディレイが生じることになります。従って、デジタルディレイを用いる場合には、特定のチャンネルだけではなく、全てのチャンネルに対して用意して頂くことになります。
エンコーダ、デコーダ
DVD-Videoなどのマスタリング作業を行う場合には、エンコーダやデコーダが必要になります。
マスタリング作業を行わない場合には、必ずしも必要とはなりませんが、デコーダに関しては業務用のものを導入されておくことをお奨め致します。
マルチチャンネル・スタジオでは、竣工時の音チェックにDVDを用いることが多くなりますが、その際の音質やデコード・パラメータの正確な設定といった理由から、業務用デコーダの導入をお奨め致します。
また、業務用デコーダの中には、基準レベルに設定されたピンクノイズをデジタル出力で取り出せるものもあり、85dBCといった絶対音圧レベルを基準としたモニタ環境の調整用の基準音源として使用することもできるため、導入を検討されていた方が無難です。
↑ GO TO PAGE TOP
2.pm3 SITE INFORMATIONの提出
上記の作業を終え、スタジオの形がある程度見えてきたところで、THX pm3 プロジェクトの申込書に相当する「pm3 SITE INFORMATION」に必要事項を記入し、THXへ送ります(E-mail、FAX)。
↑ GO TO PAGE TOP
3.THX pm3 LICENSE FEE PROPOSAL PAPERによる契約
THXが、SITE INFORMATIONを受け取ると、その内容に応じた契約見積書、「THX pm3 LICENSE FEE PROPOSAL PAPER」をお客様にお届けします(E-mail、FAX)。
その内容に合意し、署名したものをFAXでTHXに送って頂くことで、THX pm3 プロジェクトを遂行するための契約が行われたことになります。
この時点から、スタジオの設計に関する具体的な仕様等をTHXに相談しながら設計を進めることが可能となります。
設計料の支払いに関しては、後日、THXより正式なLICENSE FEE PROPOSAL PAPERと請求書(INVOICE)が郵送されてきますので、お客様からTHXの指定銀行に直接送金して頂くことになります。
↑ GO TO PAGE TOP
4.スタジオプランの検討
事前に作成したラフプランをもとに、THXの設計担当者と質疑応答や図面のやり取り(E-mail)を繰り返し、より具体的な図面へと修正してゆきます。
ほぼTHXとの合意が図れる内容になった時点で、プラン図とモニタ機材リストをTHXへ送ります(E-mail)。
THXは、プラン図を受け取った後、スピーカの微妙な設置位置や角度など修正が必要な箇所を検討・訂正し、プラン図、機材リスト、残響時間、その他pm3スタジオの性能として必要な事項をまとめた「DESIGN PACKAGE」を作成し、送付します(E-mail)。
↑ GO TO PAGE TOP
5.実施設計ベースでのスタジオプラン再検討
THX pm3 の認証を得るためには、THXより送られてきた「DESIGN PACKAGE」に遵守した設計・施工を行う必要があります。
例えば、工事の途中で、スクリーンが納まらない、プロジェクターとスクリーンとの距離が不足しているなどの理由から、映像サイズの変更が生じた場合、それに伴い全てのスピーカレイアウトの再検討が必要となる場合があります。
一旦決定された仕様から大幅な設計変更をTHXに依頼する場合、工程に多大な遅れをもたらすとともに、場合によっては、その分の設計変更費用を追加費用としてTHXに支払う必要が生じます。
THXの指示通りのレイアウトの実現が可能か否かを実施設計ベースで検討し、一部でも困難な箇所がある場合は、THXと質疑応答を繰り返し、実施ベースの図面にて最終的なDESIGN PACKAGEを再度THXより受け取る必要があります。
↑ GO TO PAGE TOP
6.スクリーンの発注
THXと実施設計ベースでの合意が得られた時点で、スクリーンの発注を行います(TVモニタを使用する場合は「」へ)。
おそらく、そのスクリーンは、THXの指定により音響上の影響を加味した特注サイズとなっていると思います。従って、スクリーンの納期は通常のものより長くなる可能性があり、工事完了に間に合うか否かで後の工程に影響が生じます。換言すれば、スタジオオープンまでの工程は、予めスクリーンの納期を考慮して計画しておいた方が無難です。
他には、実施設計図面の作成などを行いながら、工事開始に備えます。
↑ GO TO PAGE TOP
7.工事とBase Management Controllerの発注
工事には、主に内装(建築、設備)工事、機器設置、ワイヤリング工事などがあります。
スタジオの工事は、様々な業種の絡み合いの中で進行してゆきます。
工事に際して注意しないといけないことは、例えば以下のような作業がどの会社の工事範囲に含まれているかを把握しておくことです。
スピーカの設置及び、取付け角度の調整
スクリーンの組立及び設置
プロジェクターの設置及びその投影サイズ調整
以上の事項は、pm3スタジオを完成させるためには、特に厳密な作業が要求される事項です。
例えば、内装施工会社が建築施工だけを行い、機器供給会社がスピーカを納品するだけの作業しか行わない場合、最も重要なスピーカの設置は誰が行うことになるのでしょうか?また、プロジェクターに関しても、それを設置し、スクリーン上にTHXの指示通りの画面サイズを映し出すための調整を責任を持って行う会社がいなかったとしたら?
また、モニタ系のワイヤリング・プランは、測定や調整作業を円滑に行うことができるようなパッチの立上げなど、十分な検討が必要です。音は出るが、調整ができないようなワイヤリング・プランでは、マルチチャンネルの再生環境を構築することは不可能です。
pm3スタジオでは、以上の作業が最終的なTHXによる認証の合否に関わってくるため、工事に関してはスタジオ専門会社を選択しておくことをお奨めします。
一方、お客様は、工事の間に、ワイヤリングの工程と摺り合わせながらベースマネージメント・コントローラーをTHXに発注しておく必要があります。
後日、ベースマネージメント・コントローラーが郵送され、請求書(INVOICE)が届きます。お客様より直接THXの指定銀行へその代金を送金して頂くことになります。
↑ GO TO PAGE TOP
8.スピーカ特性の仮調整
工事及び回線チェックが終了し、スピーカから音が出せるようになった段階で、スピーカ特性の仮調整を行っておくことをお奨め致します。
その時点では、もちろんミキシングコンソールのセットアップが終了している必要があります。
THXの測定エンジニアが行う調整(レベルバランス、周波数特性など)と同じ作業を事前に行うことで、THX pm3 の認証をより確実にすることができます。
スピーカ特性の調整中に、周波数特性の大きな乱れなど何らかの不都合が生じた場合は、速やかに改善を行い、その後に正式な認証測定日の打診をTHXにすることになります。
認証測定日の打診は、測定エンジニアのスケジュールにもよりますが、通常、実施日の約1ヶ月前に行う必要があります。
↑ GO TO PAGE TOP
9.認証測定
認証測定は、THXの測定エンジニアによって行われ、認証の合否に関しては、全てそのエンジニアの判断に任されています。
認証作業として行われる調整、測定作業は、以下の項目となります。
各スピーカの周波数特性の調整及び測定
サブウーファと他チャンネルとのクロスオーバーの調整
各チャンネルのレベルバランスの調整
プログラム試聴による聴感テスト
再生環境に対する最終評価は、DVDなどを用いた映画などのプログラムによって判断されるため、DVDプレーヤとDVDのソフト(THX DIGITAL MASTERINGの作品など)をご用意頂く必要があります。
暗騒音レベルの測定
空調強運転時に機器を全て稼動してNC25以下(推奨NC20以下)となっている必要があります。また、室外の歩行音や地下鉄騒音など不意な騒音の侵入がないことも認証に必要な条件となります。
残響時間測定
所定の残響特性を満足しており、フラッターエコーなどの音響障害が無いことが必要とされます。
THX pm3 の認証は、以上の全ての項目に合格することで与えられます。
音響設計に誤りが無く、「1」〜「8」までの工程に則ってスタジオがつくれていれば、必ず認証されるはずです。工程上に極端な無理が生じていたり、音響設計が十分で無い場合には、注意が必要です。
THX pm3 スタジオとして認証されると、後日THXより、認定証(額付き)、THX pm3 プレート、THXグッズなどが届きます。
↑ GO TO PAGE TOP
10.運用契約
認証されたスタジオには、THX pm3 スタジオの運用に関わる契約書類、「THX pm3 LICENSE AGREEMENT」が届きます。その書類にスタジオとTHXの双方でサインを交わすことで、THX pm3 スタジオとして、THX pm3ロゴマークの使用などができるようになります。
尚、ロゴに関しては、スタジオで制作された作品のエンドテロップに使用することが主な用途であり、その他(パッケージへの印刷など)に関しては、規制が生じますのでご注意下さい。
↑ GO TO PAGE TOP
11.1年経ったら
THX pm3 スタジオの認証期限は、1年間です。  従って、THX pm3 スタジオは、1年に1回認証の更新を行わなければなりません。
更新を行うためには、「」と同様の測定を再度THXのエンジニアが行い、性能を維持できていることが確認されている必要があります(測定費用が発生します)。
性能の維持が確認された場合、所定の更新費用を支払うことで、THX pm3 のライセンスが更に1年間延期されます。
このような更新制度により、THX pm3 スタジオは、メンテナンス・フリーの状態で、常にマルチチャンネルの再生特性を満足する正確なモニタリング環境を得ることができるようになります。
↑ GO TO PAGE TOP
【情 報】
PROSOUND(ステレオサウンド社)2000.12 Vol.100、2001.2 Vol.101「Sony PCL 408 THX Suiteのアコースティック・デザイン前編・後編」に、THX pm3 スタジオ制作の実施レポートが記載されています。こちらも、御参照下さい。
THX is (c) THX Ltd. & TM. Lucasfilm is (c) Lucasfilm Ltd. & TM. All rights are reserved. Used under authorization.
MULTICHANNEL/SURROUND SOLUTIONS by SONA CORPORATION
ソナは、THX pm3 Representation Company です。